冬北 – 6日目(最終日)

 2010年(平成22年)12月25日(土)

 朝、パーキングシェルターからの外の景色は真っ白。この日も雪が降っていた。今日は稚内を通って宗谷岬まで。今日でこの旅は終わるが、天気は今までで一番悪い。

 国道を離れて、日本海へ向かう。抜海(ばっかい)から海沿いの道に出ると、風が強くなった。海は荒れていた。無心に北へ北へと自転車をこぎ続ける。空は灰色で、気分はどうしたって暗い。

 午前10時には、人工的に掘ったものでは日本最北となる、稚内温泉に到着した。10年前に来て以来だった。様々な昔の記憶がよみがえる。ゆっくりと温泉につかり、日本海を眺める。遠く利尻(りしり)の島は、まったく見えそうにない。

 ノシャップ岬と北防波堤に立ち寄る。どちらも、全く観光客の姿は無い。稚内駅で、明日帰京するための切符を買う。そして昼食をとり、最後の食糧買出しを済ませる。

 宗谷岬に向けて走る。かつて徒歩で行ったことのある道を自転車で走る。吹雪は激しさを増し、追い抜く車がすぐ雪煙の中に消える。冬北で走っているときは、一日中リアライトを点けているが、追突されないかと心配になる。

 稚内空港を過ぎ、同じ景色が延々と続く。富磯のセイコーマートで最後の休憩。ここも見覚えがある。ここから宗谷丘陵のかげに入り、雪も風も弱くなった。

 15時25分、宗谷岬に到着。あたりはすでに薄暗く、誰もいない。お土産屋も食堂も開いていない。雄叫びを上げることもなく、涙を流すこともなく、静かに岬の記念碑に足を置いた。

 (おわり)

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