冬北 – 5日目

 2010年(平成22年)12月24日(金)

 朝、早めに起きてたこカレーそうめんを準備する。自炊することで「ツーリングっぽさ」が増してきた。午前8時に出発。日に日に出発時刻が遅くなっているが、行程も日に日に短かくなっている。

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 朝からさっそく峠越えである。知駒(しりこま)峠。標高はたった500mであるが、今回のツーリングで最大の峠。また、高い山の少ない北海道において、特に道北では有数の峠でもある。

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 交通量は全く無い。天気はくもり。風も無い。上着を脱ぐために立ち止まると、一切の無音で、耳鳴りがするぐらいだった。自分の心臓が動く音、呼吸する音が聞こえる。前を見ても後ろを見ても、人の姿はない。

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 突然、得体の知れない恐怖に襲われた。

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 この道を進めばいつか峠につく。後ろに戻れば元の場所に帰れる。自分の居る場所はわかっている。別に遭難している訳じゃない。なのに、何か怖い。

 標高が上がるにつれて、雪が降ってきた。谷筋から、尾根沿いに出ると、風も吹いてきた。辺りはだんだん暗くなり、恐怖はさらに増す。峠付近では、谷から鋭く雪と風が吹き上げてきて、顔が痛い。心拍数が上がっているのが自分でもわかる。息も上がる。

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 真っ白な景色の先に、うっすらとトンネルのようなものが見えた。峠のスノーシェルターだ。急いで中に駆け込み、自転車を降りる。シェルターから後ろを振り返ると、外は大吹雪であった。

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 もう、一人は、こりごりだ。

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 シェルターの中で息を整える。シェルターの反対側が、峠の最高地点になっていた。外を見ると、雪こそ降っていたものの風は強くなかったので、心は幾分落ち着いた。

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 白以外に全く色の無い景色の中を下る。標高が下がるにつれ雪も上がって行った。相変わらず車の無い道道に、北緯45度に来たことを示す大きな看板があった。こんな寒い土地であっても、北極と赤道の中間地点に過ぎない。

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 ふと、道ばたにタヌキがいた。近づいても、逃げようとしない。横で足を止めると、面倒くさそうにこっちを一瞥して、ゆっくり歩いて行ってしまった。せつない。

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 豊富(とよとみ)温泉に立ち寄った。天然のものでは、日本最北の温泉地である。浴室は、蒸気機関車の近くにいるようなにおいがした。温泉に石炭の成分が含まれているのである。かつて北海道には、あちこちに炭鉱があった。鉄道の多くも、産出される石炭の輸送のために引かれていた。

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 稚内へ向かう国道に合流して、午後4時頃、ちょうど良い時間に本日の目的地、開源(かいげん)パーキングシェルターに到着した。トイレと公衆電話、自動販売機と道路情報のモニターがあるパーキングエリアなのだが、地吹雪などで視界が悪くなっているときの緊急避難所を兼ねて、パーキングエリア全体がシェルターに覆われている。

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 明日は一気に最北の地、宗谷岬を目指す。こんなツーリングはおしまいにしよう。宗谷岬まで行ったら、家に帰ろう。

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