本格的なシクロクロスシーズンに入り、野辺山シクロクロスなど大きなレースの開催も迫ってきました。場合によってはピット作業をお願いされることもあるかもしれません。ちょうどイギリスの自転車情報サイト、BikeRadarに“How to work a cyclocross pit”という記事が上がっていましたので、日本語に直して置いておきます。
『シクロクロスで、ピット作業をお願いされる前に知っておきたい10箇条』
1. 事前練習が大事
もしピット作業をすることが決まったら、レース本番より前に、選手とバイク受け渡しの練習をしましょう。シケインのクリアや飛び乗り・飛び降りと同じように、バイク交換の技術は繰り返しの練習によって身につきます。
かつてCannondale/Cyclocrossworld.comチームに所属し、現在LUNAチームのメカニックを務めているダスティ・ラバーさんに聞きました。「レース中のピットはいつも大忙しです。大きいレースになるとピットにいる人の数も増えますし。選手が降りたバイクの受け取りと、新しいバイクの差し出し、これは練習することで必ずうまくなります。」
WD-40’s レースサポートチームのフィールドオペレーションマネージャーのブライアン・ダラスさんにも聞きました。「ただ突っ立って渡すんじゃなくて、選手がバイクを押してる間は一緒に走りましょう。待っている間は左手はサドル、右手は右ブレーキレバーに。選手がバイクをキャッチしたら、右手を離して、左手でサドルを少し進行方向に押す。これでちょっと推力を与えられますから。ジェレミー・パワーズもトム・ホッパーも、どのレース前にも必ずバイク交換の練習をしていますよ。」
2. 時間を測ろう
レース中は時間に追われていることを忘れないように。ダラスさんがよく見るピット作業のミスは、選手がバイク交換に入って来てるのに、メカニックが気づかないというミスだそうです。
ストップウォッチを携帯し、選手が1周何分かかるか毎周計測しましょう。シングルピットの場合、7〜10分で選手は戻って来ます。もし選手が来るのがそれ以上になった場合は、ピット作業を必要とする可能性がかなり高いということです。特に注意しておきましょう。
3. 耳も大事
LUNAチームのラバーさんの話。「選手がピット担当の声を聞き分けられるように。レース中は、実況アナウンスに高圧洗浄機と、周りはかなりうるさいですけどね。また、自転車の音を聞いて、どこかに問題がないか判断することも重要です。」
4. 持ち物について
トレックファクトリーレーシングのメカニック、マット・オッパーマンさんによると、ピット担当は、バケツと水 (極低温の時は凍結防止液やウィンドウォッシャー液などを混ぜる)、スプレーオイル、フロアポンプまたは小型コンプレッサー、空気圧計、マルチツール、毛の硬いブラシ (カセットとチェーンリングから草を取り除く)、最高のウィスキー(?)を用意しておくといいそうです。
さらにダラスさんによると、予備のシフトケーブルアウター及びインナーとケーブルカッター、予備のチェーンとチェーン切り、予備のディレーラーハンガー、ビニールテープ、綺麗なウエス、チェーンオイル、シーラント、プラスドライバーも用意しておいた方がいいようです。
5. 服装について
C1(エリート)のレースの場合は、約1時間ピットに立ち続けることになります。暖かい、防水の服を着ましょう。同様に防水の靴は必須です。高圧洗浄機があるので、たいていピットはコースよりもドロドロです。オッパーマンさんは、バイク修理の際に手こずらないよう、手袋はしないことを勧めています。
6. 高圧洗浄機のマナー
レース中、高圧洗浄機を使用するのに、洗練された技術は必要ありません。オッパーマンさん曰く、「素早く行なうのが重要なんです。水が入ってはいけない場所を気にする必要はない。チェーン周りやブレーキやハンドル周りから確実に泥を落とすのが大切。バイクはレース後にいくらでもメンテナンスできます。」
また、ダラスさんにも聞きました。「メカニックが選手の自転車を洗うのに2分かかってるのを見たことがありますが、長くても、30秒から45秒で終わらせるのが良いです。昨シーズンのルイズビルでの世界選手権では、WD-40 テックチームはだいたい15秒で終わらせていました。」
オッパーマンさんは、高圧洗浄機の無遠慮な使用は良くない、とも。「高圧洗浄機の為に他のチームと走って競争しないこと。他チームの物を踏んだりするなどもってのほか。高圧洗浄機を使うときは、水や飛ばした泥を他の人に当てないこと。水を当てるところをよく見るように!」
自転車の前側から後ろ側に向かって、また上から下に向かって順に洗浄するのがベストです。選手に触れる部分、ブレーキレバー、ハンドル、ペダル、サドルは念入りに洗浄しましょう。
高圧洗浄機が無く、バケツのみで洗浄する場合は、チェーン周りや上記の選手に触れる部分のみを重点的に洗浄しましょう。
「最後に、ハンドルやサドル、トップチューブなど選手が手で触れるところは水気を取り、綺麗にします。」とラバーさんは言っていました。
7. バイクの検査
洗浄後、バイクを選手に渡す前に、タイヤのパンクやサイドカットがないか、ハンドルやサドルがずれて曲がってないかをチェックします。シフトレバーに泥や草が絡まってないか探し、ある場合は取り除き、正確に機能するか確認しましょう。チェーンにオイルをさし、スムーズに変速できるか調べましょう。
8. 落 ち 着 い て !!
ピット担当達も、選手達もレース中は緊張しています。オッパーマンさんは、レース中、メカニックが焦って気が動転し、考えられないミスをするのを見ることもあるそうです。「よく準備して、事前に選手と問題が起きた時の手順を話し合っておきましょう。ピットで慌てる前に!」
9. 最終チェック
最後に、しかしバイクを選手に渡すより前に、最終チェックをしましょう。ブレーキは開放したままになっていないか? バイクを洗浄した後やホイールを交換した後は特に注意しましょう。もう一度変速がスムーズか確認しましょう。そして、バイク乗車に最適なギア位置に合わせましょう。オッパーマンさん曰く、「前はアウター、後ろはトップ寄りに。左のクランクを前になるようにして、飛び乗りやすいように。」とのことです。
10. 本当の仕事はレースが終わってから
もしあなたがピット担当のみで、バイクのメカニックではない場合は、レース後にバイクの調整・交換が必要な部分を伝えてバイクを引き渡しましょう。
もしメカニックでもあるなら、次の項目を一つ一つ、バイクの前から後ろに向かって丁寧に行ないましょう。タイヤは傷がないか、磨耗していないか。チューブラーの場合は、接着は充分か。ブレーキパッドは充分に残っているか。ホイールは振れてないか。バーテープが傷ついていたり、著しく汚くなっている場合は交換。フレームに傷はないか。ディレーラーハンガーは曲がっていないか。変速具合をチェックし、場合によってはワイヤーを交換。
ハブやBBなどの回転部分は酷い泥のレースの後では交換する必要があるかもしれませんが、オッパーマンさんによると、シールを開けるよりも、綺麗にして注油するだけで治ることが多いんだとか。
——
以上が、シクロクロスレースでピットに入る前に知っておきたい10の事項です。準備は万端ですか? 忘れ物はないですか? いま一度、確認しておきましょう。当日、ピットで慌てることのないように!!